三島町の移住で編み組を学ぶと、木が倒れる現場にも入る|編む材料は、水に沈めた木の皮から

公開日: 2026-10-08
三島町/編む材料から暮らしを仕込む町/①材料づくり/②夏から秋へ/③夏は花、冬は編み組

広報みしま2026年8月号の地域おこし協力隊活動誌は、7月2日のことをこう書いています。「幹はさらに切断され、みんなで樹液と雨に手を滑らせながら持ち運んではバールを木皮に差し込む。クルミの皮のようにつるりと剥けた。そして仕上げにこれを水へ沈めてやる。腐らせることで層がはがれ、やがて私たちがよく知るモワダになるという。」※1

編み組の教室は、材料が机の上に並んだところから始まるのだと、私は思っていました。

ところが、三島町の生活工芸館では、編み組を習う人も、材料になる木を伐る現場に入った日がありました。

では、編み組を習いに来た人の手は、材料から暮らしのどこまで届くのか。

答えは、材料を水に沈める仕事から、畑と棚田、そして冬の編み組までです。受講生は材料を採る季節に畑や近所の仕事にも加わり、学んだあとは夏の農業と冬の編み組を組み合わせて暮らす人もいます。

この記事では、自治体と国が発表している一次資料を読んで見えてきた、

という3つの柱を、暮らしの数字も交えて解説します。モノサシは一つだけ。編むために来た人の手は、暮らしのどこまで届くか。締めくくりに、私の見立てを置きます。

三島町で編み組を学ぶ|木を伐る現場から、皮を水に沈めるまで

一つ目の柱は、編む素材を用意する材料づくりです。

2026年4月14日、生活工芸館で第9期生活工芸アカデミーの開講式が開かれました。編み組の技術を習うほか、材料の採取や農作業の研修にも取り組む受講生を、関係者が激励しました※2。広報の紹介欄に載った受講生は3人。その一人は、編み組細工や畑仕事に関わり、「人の生き方そのものを学んでいけると感じます」と書いています※2。

材料の採りどきは、開講後の予定に合わせて待ってくれるわけではありません。6月の工人まつりの前後には、さまざまな材料の採取適期が一気に押し寄せ、工芸館ではイベントの準備と採取が重なります。7月号の工芸館だよりでは、ほかの工人がアカソを採り始めたのを見て状態を確かめ、従来はまつりの後だった最初の採取を、今年は直前に早めていました。山ブドウも、昔は「栗の花が咲く頃が適期」といわれたのに、今はそれより前に確かめないと間に合わないことが増えた、とあります※3。

この初夏の採取には、学び始めた第9期生も加わります。同じ7月号の活動誌では、限られた期間に材料を確保するため、軽トラックいっぱいに採ったアカソの皮を連日剥いでいました。荷台いっぱいのアカソから、材料として使える部分はほんのわずかです※3。

材料採りと並んで、教室で編む手も動いています。移り住んで3か月の第9期生は、ヒロロの3作目とクルミの2作目に入っていました。自分たちで編み進めるものの、一度作っただけではなかなか身につかず、先生や先輩に助けてもらいながら制作しています※3。

同じ活動欄には、宮下と浅岐の畑で育つ野菜と、ご近所との笹まき作りの写真も載っています。開講時に案内された農作業と地域の人との交流が、材料採りや制作とともに、第9期生の日々に入っていました。結びの文はこうです。「旬の素材を採取し、保存し、大切に使う。そんな三島町の暮らしを、これからも学んでいきたいと思います。」※3

初夏の採取に続いて、7月2日には、材料になる木の伐採現場へ入った記録があります。雨の中、あたりは6時を過ぎても薄暗いままでした。工芸館の人たちは総出で、道路沿いに並ぶシナノキのもとへ向かいます。木こりが重いチェーンソーで枝を落とし、幹を上・中・下と切り分けていきます。木から垂らしたロープを、みんなで引く場面もありました。最後に根元へ刃が入ると、木は一度だけ鈍い音を響かせて倒れました※1。

倒れた幹はさらに切られ、今度は運ぶ人たちの手が入ります。樹液と雨で滑る幹を持ち運び、バールを皮に差し込んで剥ぐ。切ったのは木こりで、運んで剥ぐ作業には工芸館の人たちが加わっています。剥いだ皮は、仕上げに水へ沈められました※1。

木の皮を仕込む/シナノキ/水に沈める。山あいのテントの下のプールで、伐られた木から剥いだ皮を水に沈める場面。人物は小さな後ろ姿。
図1 木の皮を水に沈める(※1)

水へ沈めた皮は、編む材料になるまで、どんな手を通るのか。

三島町の夏から秋へ|モワダ洗いから、棚田の稲刈りまで

二つ目の柱は、夏から秋へ続く手仕事です。水に浸して腐らせた樹皮は、洗い、干して、編み組の材料にします。その工程が見えるのは、2020年8月17日のモワダ洗いの記録です※4。

その日、浅岐地区の大谷川には、生活工芸アカデミー生や伝承生ら13名が集まりました。モワダは、正式にはシナノキと呼ばれる木から作る材料です。水に浸した樹皮を1枚ずつ丁寧に剥がし、きれいな流水でぬめりや汚れを落とします。洗い終えたモワダは天日干しで乾かし、アカデミー生の編み組細工に使われます※4。

流水で材料を洗う夏の仕事があり、秋には田んぼで収穫する仕事があります。2026年9月19日、間方の宮ノ前の田んぼに、棚田お田助オーナーとそのご家族、かしゃ猫クラブの人たち、そしてアカデミー生が駆け付け、稲刈りをしました※5。

この棚田お田助オーナー制度は、地区の外の人の力も借りながら、楽しんで里山の景観を守り、自分でつくったご飯を味わってもらおうと、数年前に間方で始まりました。今年は雨が多く、田んぼが乾かない中での稲刈りです。10人で2枚の田んぼ、約1反のひとめぼれを刈り取り、「ねり」に掛けました※5。

町民記者通信は、この日の参加者全員が景観保持と収穫の喜びを分かち合ったと結んでいます。ねり掛けした稲は、20日間ほど日の光を受けてから脱穀します※5。

夏から秋へ続く手仕事/流水/棚田。流水のある山あいの棚田と、木の竿に掛けて干す稲。作業する人は遠景の後ろ姿。
図2 モワダ洗いから稲刈りへ(※5)

稲を干す秋の仕事の先には、雪の季節が来ます。奥会津では、農作業が休みになる冬に、人々が暮らしの道具を作ってきました※6。畑と編み組の両方を学んだ人は、その先の一年をどう組んでいるのか。

三島町へ移住した人の一年|夏は花、冬は編み組

三つ目の柱は、冬まで入れた、一年の組み方です。

夏は花、冬は編み組/畑の準備/副業。夏のカスミソウのハウスと、手前に置かれた編み組のかごと蔓。人物は遠景の後ろ姿。
図3 夏は花、冬は編み組(※7)

2019年に生活工芸アカデミー生として移住した人は、先輩農家の話を聞いてカスミソウ栽培に興味を持ちました。2026年9月号のインタビューでは、14棟のハウスで花を育てる専業農家になっています。農地は栽培を縮める先輩から借り、家は町の空き家バンクで探しました。副業は、冬の編み組細工です※7。

同じ号の「1年のスケジュール」を、月の順に並べるとこうなります※7。

時期 仕事
3月下旬〜6月中旬 畑の準備
6月中旬〜11月中旬 収穫
11月中旬〜12月上旬 畑の片づけ
1月〜2月 副業(編み組等)

同じ人は、専業農家が少ないので「農業をやっている」と話すと応援してくれ、農業の大変さをわかって手伝ってくれる人もいる、と話しています※7。「交渉次第ですが、三島町で農地は探しやすいと思います。」※7

この一年について、本人の言葉はこうです。「三島町に暮らすメリットは、編み組細工があることだと思っています。夏場の農業と、冬場の編み組細工を楽しんで行けたらと思います。」※7

私の見立て|三島町は、編む材料から暮らしを仕込む町

モノサシに戻って、編むために来た人の手がどこまで届くかを、一行ずつ並べます。材料では、出来合いの素材を使う手前の、木の皮を仕込む仕事まで。季節では、教室を出て、地域の人と収穫を分け合う田んぼまで。一年では、修了後にも農業と手仕事を続ける、冬の仕事まで。

私の見立てはこうです。三島町は、編む材料から暮らしを仕込む町です。

編む材料から暮らしを仕込む町/水に沈める/冬の編み組。雪の季節の工房。作業台のかごと蔓、窓の外の山と川。編む人は小さな後ろ姿。
図4 材料から冬の編み組へ(※1)

冒頭で水へ沈められた皮の手前には、木を伐り、運び、剥ぐ仕事がありました。2026年8月号の活動誌は、7月2日をこう結んでいます。「普段何気なく手にする素材は、雨の中で一本の木が倒れる、その瞬間から始まっていた。」※1

三島町を数字で見たい人へ|人口・仕事・冬・移住と住まいの要点

項目 数字
人口 1,284人(2026年1月)※8
世帯 663世帯(同)※8
就業者のうち農業 8.8%(2020年)※9
1月の平均最低気温 -3.4℃(平年値)※10
8月の平均最高気温 29.5℃(平年値)※10

移住と住まいの支え(各ページの時点で)

町の暮らしのデータは三島町のページにまとめてあります。助成の金額と条件は年度や期で変わるので、申し込む前に町の現行のページで確かめてください。

出典リンク集

本文の※番号に対応する資料です。括弧内は資料の頁・年と、確認した日付です。1つの番号に資料が複数あるときは「 / 」で区切っています。

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