路肩に切り株の根を埋めて道を作る町|四万十町に移住して、山の仕事を道づくりから始める

公開日: 2026-10-09
四万十町/山の土で道を作り、木を出す技術を育てる町/①土で道を作る/②山で作り方を学ぶ/③山仕事を広げる

「道幅は軽トラックが通れる2~3メートル程度。」

高知県四万十町が説明する、四万十式作業路の幅です※1。山の仕事を始めるなら、まず木を切る技術を覚える。私は切り出す作業から考えていました。

ところが、四万十町では、その前に使う道も作ります。現場の土を重ね、木の根株、つまり切り株の根を路肩に埋めて支える。道の材料は、すべてその場で調達します。2018年度の研修には、実際に作業する山での道づくりの指導もありました※1。

では、なぜ四万十町で山の仕事をするなら、木を切る前に道なのか。答えは、土で作る小さな道が後からも山へ入る足場になり、山で作り方を学んだ人が、木を出す仕事に使えるからです。

この記事では、自治体と国が発表している一次資料を読んで見えてきた、土で道を作る・山で作り方を学ぶ・学んだ人が山仕事を広げるという3つの柱を、移り住んだ人の暮らしも交えて解説します。モノサシは一つだけ。山へ入る道が、その後の仕事にどうつながるか。締めくくりに、私の見立てを置きます。

四万十町の山道を作る|土と根株が、木を出す道の材料になる

一つ目の柱は、土で道を作ることです。四万十式作業路が使うのは、植物の根や葉を含んだ表土。その下にある土と交互に積み重ね、重機で踏み固めます。植物の繊維と土が絡み合って、崩れにくくなるという作り方です※1。

路肩には、木の根株も埋め込みます。根株まで道の材料にするわけです。外から材料を運んでくる費用も抑えられる。町の元職員が考えたこの道は、四万十式と呼ばれています※1。

土で道を作る/表土/根株/土と根株で支えた山の作業道と小さな重機
図1 土で道を作る(※1)

町はこの作り方を、自分たちが管理する山でも使いました。2006年12月13日の町の答えには、四国電力と一緒に森づくりをしている立目新山に、四万十式の道を敷いているという話が出てきます。町有林を、地域の林業経営のモデルにしたいという考えでした※2。

小さな機械で安く道を作ると、結果として、後からもいつでも山へ入れる道が残る。町はそう説明しました。その道を使えば、木を間引いて育てる手入れができ、木材の価格を見ながら切り出す時期を選ぶこともできる、という答えです※2。

この道には、町の外からも学びに来た人がいました。2006年の町の答えには、林野庁の次長や国有林野部長が現地研修に訪れた、とあります※2。では、山仕事を始める人は、その作り方をどこで学べるのでしょうか。

四万十町で道づくりを学ぶ|教える人が、実際に作業する山へ来る

二つ目の柱は、山で作り方を学ぶことです。山の手入れを担う人を育てるため、町は2016年度から研修などに取り組みました。森林組合が担う林業実務研修には、初年度に26人、翌年度に25人が参加しています※3。

参加者が出かける研修に加えて、教える人が作業している現場へ来る機会もありました。2018年度の案内には、自伐林業者が実際に働く山で、道の開設や、切った木を山から運び出す搬出の方法を教える随時の技術指導が載っています※3。

その年の研修は、町内に暮らすか森林を所有する、林業経営に熱心な自伐林家や森林所有者に向けたものでした。研修受講料は無料。草を刈る機械やチェーンソーの扱いに加え、木を運ぶ車両の運転など、取得できる資格も日程ごとに示されています※3。

道づくりの実技も、その日程に入っています。2019年3月5日から7日に案内されたのは、表土を積み重ねる工法などを学ぶ研修です。どんな線で山に道を通すか。その線の取り方も、実技で学ぶ中身に含まれていました※3。

山で作り方を学ぶ/作業している現場/技術指導/山の作業道で教わる小さな作業者の後ろ姿
図2 山で作り方を学ぶ(※3)

道を作り、木を切り、機械で運ぶ。現場で覚えた技術を使って、どこまで仕事を広げた人がいるのでしょうか。

四万十町で山仕事を広げる|覚えた道づくりが、木を出す仕事になる

三つ目の柱は、学んだ人が山仕事を広げることです。2020年4月8日に県の小規模林業推進協議会が紹介した受講者は、町の回覧板で育成講座を知り、祖父の山の道500mを補修するところから始めました。約半年、別の人が作業する山で腕を磨き、祖父の山には約2年で約400mの新しい支線、つまり枝分かれの道を作っています※4。

その道づくりは、祖父の山の外にも進みました。隣の山の管理を任されたきっかけは、自分から道を付けさせてほしいとお願いしたこと。少し離れた別の山では、山を買うように頼まれたものの、購入せずに木を伐らせてもらい、木の代金を所有者に返す形で管理しています※4。

山仕事を広げる/隣の山/枝分かれの道/枝分かれする山道と木を積んだ軽トラック、作業者の後ろ姿
図3 山仕事を広げる(※4)

町がいう自伐林業者には、森林の所有者以外も含まれます。山林を持つかどうかや広さにこだわらず、自分で森林を管理し、作業し、継続して収入を得る自営の林業を行う人です※1。

森林組合による技術の指導は、2022年度にも行われました。草刈り機やチェーンソー、小型車両の運転を教える講習と、木を切る作業などの現地指導を7回に分けて行い、参加者は39人でした※5。

学ぶ機会の先で、自分で山に入り木を出す人を、町は2023年に数えています。2023年6月13日の町の答えは31人。町の支援を利用した人や、大正北ノ川地区で切った木を集めて売る場所、貯木場に登録した人などの集計です。4団体も含む数で、団体に所属する人まで入れれば、さらに多いという答えでした※6。

働く人が使う機械にも、支援は届いています。2024年度、町は町内の森林で活動する自伐林業事業者17人に、機械の購入やレンタルの支援を行いました※7。木を切る人を育てる事業の目的には、木を安定して供給し、木質資源を有効に使うことが掲げられています※7。

自営で木を出す仕事に加えて、企業組合で働き始めた移住者もいます。2025年8月5日の県の紹介では、林業大学校のインターンシップを通じて十和地域のとおわ守人企業組合へ就職した人が、木を切り出すだけでなく植えて育てるところまで行うことを、組合を選んだ理由に挙げていました。就職を決め、町内の空き家を整えて移住する人に貸す十和の中間管理住宅への入居も決まった後、県への移住から6年がたった紹介時には、自分の林業会社を立ち上げていました※8。

私の見立て|四万十町は、山の土で道を作り、木を出す技術を育てる町

山へ入る道が、その後の仕事にどうつながるか。山にある材料で支えた道は、木材の価格を見て運び出す時期を選べる足場になる、と町は説明しました。教わる場所は、受講者が働く山まで。講座から始めた人の中には、道づくりを隣の山へ広げた人もいます。

木を出す技術を育てる/土と根株/山へ入る道/根株で支えた山道、遠くの軽トラックと小さな重機、四万十川
図4 木を出す技術を育てる(※1)

私の見立てはこうです。四万十町は、山の土で道を作り、木を出す技術を育てる町です。移住して山で働く道筋は、使う道を作るところから、現場で技術を学び、手入れする山を広げるところへ続いています。

2026年度も、町は自伐林家などを育てるため、林業機械のレンタルや購入費用を支援すると案内しています※9。2006年12月に町が答えた道の役目は、「いつでも山に入れる作業道が残る」ことでした※2。軽トラックが通れる2~3メートル程度の道は、木を出したあとも、次に山へ入る日のために残す道でした※2。

四万十町を数字で見たい人へ|人口・山の仕事・住まいの要点

研修の年度 参加者
2016年度 26人
2017年度 25人
2022年度 39人

出典リンク集

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