氷見市に移住して、子どもを進学に送り出す|戻らなくてもペナルティはない「ぶり奨学」

公開日: 2026-10-09
氷見市/子どもの進学を送り出し、在学中も話し続ける市/① 進学を送り出す/② 会い続ける/③ 暮らしを聞く

「戻ってこなかった場合にペナルティなどはありません」

富山県氷見市の「ぶり奨学プログラム」には、この一文が添えられています。卒業後10年以内に氷見へ戻った人の奨学金などの返還を助ける仕組みです※1。

返還の支援は、卒業して地元に戻った人に出すお金の話だと、私は思っていました。移住先で子どもを育てる家庭の話とは、少し離れて見えていました。

ところが、登録の入口には、今ここに暮らす親子も入れます。本人が氷見市に住所を持っているか、以前持っていたことが住所の要件です。移り住んだ家庭の子も、大学などへの進学予定か在学中で、親子での説明会受講などの要件を満たせば登録の対象になります※2。

そして、学びに出たあとも、学生は氷見と会う機会を持ちます。2026年度の交流会の案内には、市役所に加えて東京・名古屋・大阪の会場が並びます※3。各回には違うゲストを招き、働き方や暮らしの話を聞くテーマが用意されています※4。

では、なぜ、卒業後を支える「ぶり奨学」が、在学中の学生とも会うのでしょうか。

答えは、子どもの成長を支えるために、進学を送り出す、会い続ける、暮らしを聞くという応援を重ねるからです。

この記事では、自治体と国が発表している一次資料を読んで見えてきた、進学を送り出す、会い続ける、暮らしを聞くという3つの柱を、住まいと進学の要点も交えて解説します。モノサシは一つだけ。子どもが学びに出て暮らしを選ぶまで、誰と話せるか。締めくくりに、私の見立てを置きます。

氷見市で進学を送り出す|農と漁の金融機関まで、協定に加わった

一つ目の柱は、進学を送り出すことです。親子が説明を聞くぶり奨学には、町で育った子の成長を、回遊しながら育つ出世魚「ぶり」に重ねる考えがありました。さらに学んだ子が、ふるさとの未来のために活躍できるよう支えることを目的に、検討を進めたプログラムです※5。

その考えに、金融機関が集まりました。2016年12月22日、市は市内に本店や支店を置く、すべての7金融機関と協定を結びます。銀行と信用金庫のほか、農協、県の信用漁業協同組合連合会も加わりました※5。

協定でともに取り組むことには、在学中の交流や就職・起業の応援も入りました※5。

進学を送り出す/7金融機関/農と漁。富山湾と立山連峰を望む港の朝、進学する若者を親が見送る後ろ姿。
図1 進学を送り出す(※5)

2021年には、氷見伏木信用金庫の寄付が4年連続になりました。理事長は「少しでもまちの活性化に貢献したい」と述べました※6。

寄付は、さらに続きます。2026年1月14日、同じ信用金庫が市役所で寄付金の贈呈式を行いました。寄付のもとは「ぶり奨学定期預金」の販売で、その販売額に応じた寄付がプログラムの資金の一部になります。信用金庫自身のお知らせにも、2017年度から9年連続で寄付を行った記録が残っています※7。

その応援を使って進学を考える親子へ、翌春の進学に向けた説明会の募集があります。2026年10月時点の対象は、大学などへの進学予定者と、在学中の学生、その保護者です※8。

説明を聞くのは、親子それぞれです。年内には12月18日と19日、市役所で説明会を開く予定です。会場へ行けないときは動画でも受講でき、別の日に見ることや、一方が市役所、一方が動画で参加することも認められています※1。

氷見市で学生と会い続ける|卒業前から話す相手は、地元の会社にも

二つ目の柱は、会い続けることです。親子で説明を聞き、先に登録した学生は、その後どうなったのでしょうか。2018年の市の報告では、前年度末に最初の卒業生10人が出て、うち7人が氷見へ戻ってきていました※9。

市はその報告とともに、在学中の学生へ企業説明会などを案内し、参加を促す方針を示しています。登録した学生に、市内企業への理解を深めてもらうためです※9。

案内の対象となる登録者は、その後も増えました。2021年2月時点で登録者は221人になり、卒業生の5割以上が氷見へ戻って活躍しています※6。

学生と話す側にも、実際に交流会へ加わる会社がありました。氷見市柳田に本社を置く水口化成は、ぶり奨学の趣旨に賛同し、関連行事や交流会へ積極的に参加すると採用サイトで述べています。若い世代との対話で大切にしているのは、「その想いや声に耳を傾ける機会」です※10。

会社と話す機会に加えて、学生には県外でふるさとの人と会う場も用意されています。2026年度の東京の回には、Uターンして地元でかなえた夢を聞くテーマが掲げられました※4。名古屋と大阪にも対面の会場があり、学生は県外の回にも申し込めます※3。

卒業前から話す/学生/地元の会社。海の見える交流スペースで、学生と地元で働く人が机を囲んで話す後ろ姿。
図2 卒業前から話す(※10)

氷見市で暮らしを聞く|移り住んだ人の話が、学生にも届く予定

三つ目の柱は、暮らしを聞くことです。学生が将来の仕事を考える場に、氷見で暮らす人の視点も加わります※4。

暮らす側には、外から来て日々の買い物を覚えた人もいます。2023年9月、移住4年目の相談員は、丸ごと売られる魚も売り場の人に声をかけると快くさばいてもらえた経験を紹介し、初めて食べた刺身を振り返って「氷見に来てよかった」と書きました※11。

その暮らしを、移り住んだ人同士で話す場も開かれました。2026年6月13日、氷見市IJU応援センター「みらいエンジン」は、速川地区のゲストハウス「ソライロ」で「夜の里山移住者交流会」を開催。2週間前に移住した人や、家族で移住した人など、13人が参加しています※12。

地元のおいしい料理を食べながら、氷見の良いところや、移住者ならではの暮らしの悩みを語り合いました。食後には近くの用水路へ足を伸ばし、ホタルを観察しています。参加者は、暗闇にぽつぽつと舞う光に大喜びしました※12。

交流会を企画した協力隊員は、子育て世代に向けた移住情報も発信しています。この年の9月号には、子育て世代が気軽に訪れやすい場所を紹介する「ひみ子育てマップ」を作成中だという活動も載りました※12。

子育て世代に向けた情報の発信に加え、学びに出た学生にも、暮らしている人の視点を届ける予定があります。移住者同士の会とは別の、ぶり奨学の交流会です。2026年11月7日、大阪の回のテーマは、移住アスリートが思う氷見の魅力です。富山ドリームスと氷見伏木信用金庫に所属する選手を、ゲストに招く予定です※4。

そして、2027年1月11日に市役所で予定する回では、公務員とデザイナーの夫婦が見つけた働き方と暮らしを聞きます。ゲストは、フリーランスのデザイナーで地域づくりにも関わる人です※4。

交流会は複数回参加できます※3。各回に違うゲストが予定されているため、同じ学生が、移り住んだ人の話と家族の働き方の話の両方を聞くこともできます※4。2026年度の氷見の会場は、市役所の地域協働スペースや会議室です※3。

暮らしを聞く/公務員/デザイナー。海の見える交流スペースで、学生が暮らしの話を聞くイメージ。本文のゲストの回は予定。
図3 暮らしを聞く(予定)(※4)

私の見立て|氷見市は、子どもの進学を送り出し、在学中も話し続ける市

子どもが暮らしを選ぶまで、誰と話せるか。親子が説明を聞く入口では、市が話し、2016年の協定には農と漁の金融機関まで名を連ねました。離れて学ぶ学生の話には、町で働く会社が耳を傾けます。暮らしを話す相手には、外から来た選手や、違う職種で働く家族も予定されています。

私の見立てはこうです。氷見市は、子どもの進学を送り出し、在学中も話し続ける市です。

登録の住所要件は、今ここに住む子にも、かつてここに住んでいた子にも開いています※2。移り住んだ家庭が子どもを育て、やがて送り出すときにも、進学の途中で町の人と話す機会が続きます。市の案内が置いている帰郷の期限は、卒業後10年以内です※1。

在学中も話し続ける/親子/学生。富山湾を望む港沿いで、親子と学生が話す後ろ姿。
図4 在学中も話し続ける(※5)

氷見市を数字で見たい人へ|進学・住まい・相談の要点

ぶり奨学の額と、現在の登録・住まいの要点です。

項目 目安
返還助成 最大240万円※1
帰郷の期限 卒業後10年以内※1
交付の期間 10年に分割※1
相談窓口 IJU応援センター※13

人口の推移は氷見市の人口ページに、生活に関するデータは氷見市のページにまとめてあります。本文の交流会は2026年9月30日更新の案内に基づく予定です。参加条件や次の募集、進学支援の現行条件は、出典の市のページから確認してください。

出典リンク集

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